ヒギビル小話

「おい、新入りビルダー。
 何故お前はだらけてばかりなんだ。
 それでも同じビルダーか!?」
「わたしはサボるアリみたいなものですよ〜。
 いざって時に力を発揮するタイプです」
「なら今度から虫けら呼ばわりだな」


「お祭りの飾りってヒギンズさんが全部作っているの、すごくないですか?」
「当然だ」
「ディーディー車両も外灯もあっという間に作り上げましたよね!」
「速さも重要だからな」
「じゃ、今日の依頼は全部よろしく〜」
「そうはいかん。今日は引きずってでもギルドに連れて行く」
「えー」


「一体どんな悪事を働いたんだ?」
「えー、ヒギンズさん、今度は何ですか〜?」
「お前はコミッションをほとんど受けていない。
 なのに道具は全て高ランクに入れ替わっている。
 お前だけ特別手当でも出ているのかと聞きに行ったが、そんなことはなかった」
「それはそうですよ」
「なら悪事に手を染めているとしか考えられん」

「なるほど、見事な推理です。では私も推測を述べていいですか?」
「何だ」
「ヒギンズさんはわたしのことが大好きなんですね!」
「何でそうなる!?」


●キングフグ

「ヒギンズさん、ヒギンズさーん。ヒギンズさーーーーん」
「うるさい。あっち行ってろ」
「聞いてくださいよー。ついに、キングフグが釣れたんですよー!」
「それがどうした」
「通常のフグの50倍売値がつくんですよ。すごくないですか?」
「興味ない」

「あれ、お金大好きなヒギンズさんにしては珍しい」
「釣れるかどうか分からない運任せをするより、コミッション受けたほうが安定して稼げるだろ」
「なるほど〜、さすがですね〜」
「本気で思ってないだろ」
「ほんとですよ?わたしには出来ないことですから」


●怪我

「何だその怪我は」
「あはは〜。ちょっとやらかしました〜」
「はっ、当ててやるよ。作業場で転んだか? 横着してたらそんな怪我ではすまないぞ」
「違いますよ〜。昨日、噂のナイトに出会いまして」
「はあ?何でそんなことに?」

「民兵団と一緒にいたら偶然出会いまして。
 私はすぐに物陰に隠れたんですけど」
「攻撃に巻き込まれて、怪我を?」
「いえ。みんなが必死に戦ってるから、わたしも頑張らないとかな〜って。
 蹴りを当てようとしたんですけど、返り討ちです」

「全く。大人しくしていればいいものを」
「わあ、ヒギンズさん、心配してくれてるんですね?」
「してない。1ミリたりとも、そんなものは全く無い!」

「あはは、そうでしたか〜。
 ……やっぱわたし、みんなと同じようにはできないなあ」


●無言

「坑道の怪我人救出にヒギンズさんも居た、ってことは戦えるってことですよね?」
「それがどうした」
「意外ですね〜。ビルダーですから狩りもするでしょうけど、人助けもするんですね」
「お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「では、わたしがピンチな時も助けに来てくださいね?」
「………………………………」
「何で黙るんですかー」


●ひねくれ者

 ヒギンズさんをいじめてた人は、昔のことを謝りたいと思いました。
 謝罪に行くけど、当然のように拒否されました。
 それでも諦められなくて、次は、花束を持っていくことを決めました。
 誰もが好む花束ならば、嫌な顔はされないだろう、と。

 でもその花束すらも、強く拒絶されて振り払われました。
 その人は思いました。

『みんなが好きなものすら嫌うだなんて、根っからのひねくれ者じゃないか』

 そして二度と、彼と和解しようとは思わなくなりました。


●一位

「おい!どういうことだこれは!」
「わあ。ヒギンズさん、そんなすごい剣幕でどうしたんですか〜?」
「何故お前が今季のランキング1位なんだ!今までずっと最下位だっただろ!?」

「そういえば最近大型建築の依頼あったし、そのついでに他のコミッションもあるだけ受けたなあ」
「どうしてお前みたいな怠惰な奴が俺以上の功績を上げてるんだ!おかしいだろ!」

「じゃあランキング1位の報酬、返却しますよ〜?
 それならヒギンズさんが繰り上がるし」
「ふざけるな!
 俺の努力がお前に負けているだなんて、そんなことがあってたまるか!」

「わたし、ヒギンズさんのことはすごいと思ってるんですよ?」
「嘘を付くな。馬鹿みたいに真面目なだけ、だと思ってるんだろ!」
「逆ですよ。真面目ですごいな、って尊敬してます。
 だってわたしには出来ないことですから。
 毎日朝早くから依頼受けてるの、立派ですし」

「はっ、その立派なことをやってても、怠惰なお前に負けたわけだ」
「偶然ですよ。報酬の返却も、別にこの仕事をバカにしているわけじゃないですよ。もしそう聞こえたのならごめんなさい」
「そんなことするんじゃない」
「だって、ヒギンズさんとお話できなくなるの、嫌ですし」

「はあ。もういい。
 今回お前に負けたのは、俺の努力が足らなかっただけの話だ」
「わたしも今後は控えますね〜」
「ふざけるな。
 今後もいつもどおりにやれ。
 お前が今回と同じぐらい依頼を受けていても、俺がその倍はこなして、今度こそ勝ってやる!」
「あはは。それでこそヒギンズさん、って感じですよ〜」


●観察眼

「貴方たちって似た者同士よね」
 いつも顔を合わせるギルドの受付は、微笑みながらそんなふざけたことをぬかした
「はあ? 俺とあいつのどこが似てるんだ? 勤務態度に違いがありすぎるだろ!」
「違うわよ、他人にどう思われても構わないって態度が、よ」

 呆れて思わずため息をついた。
「そんなこと、似ていても嬉しくもなんとも無い」
「あと、なんだかんだ言ってても緊急時には真っ先に動くとか。
 お互いにお互いのことを、自分がいちばん理解してるって顔してる、とか」
「最後は違うだろ!」
「違わないわよお。私はいつもここで、貴方たちを見てるの」

 観察眼は自信があるのよ、と笑う。
 深い色をした目だ。
 確かに以前、採掘現場で熱中症になった時、真っ先に俺の不在に気づいたのはこいつだった。

 だからといって、俺たちのことまで、何もかも分かるだなんて心外だ。
 それなら、あいつのほんとうの奥底まで見てみやがれ。
 俺なら出来るけどな!


●代わり

「何であんなに突き放してもめげずに話しかけてきたんだ」
「違いますよ〜 ヒギンズさんがわたしに構ってくれんですよ」
「構ってない。断じて、構ってなどいない!」

「構ってくれること自体が嬉しかったので、嫌な顔されても突き放されても、あまり気にしてなかったですね〜」
「ほんとに変なやつだな」

「だって、会いたい人はずっと来てくれませんでしたから。構ってくれるのなら、それが楽しいことでも嫌なことでも、わたしは嬉しかったんですよ〜」
「……そうかよ」
.
「なら、俺はただの父親代わりってことかよ、クソッ」


●涙

 目の前に、ぼろぼろなビルダーが居た。
 傷ついて、膝をついて、わあわあ泣きわめている。
 何があったかなんて知らない。

 日々の不満を晴らすように、「ざまあみろ」って言ってやりたかった。
 調子に乗っているからだ。
 全部が上手くいくわけないだろう。
 嫌味ならいくらでも心の底から湧き出てくる。

 でも、いざ近づいてみれば。
 そんな言葉は、どれも喉に引っかかって出てこない。
 去来するのは幼い時代の泣き喚く自分。
 あまりに惨めで苛立ちが沸き上がる。

「立てよ」

 思わず口に出てしまった言葉に後悔する。
 けれども、本心なのだからどうしようもない。

 「立て、お前は俺のライバルだろ」

 こんな時に、どんな言葉を投げかければいいかなんて、分かるわけがない。