「お祭りで、何をしてみたいか?」
レオン王子の私室で、私は思わず問い返した。
ケメトは私と同じくきょとんとした顔。レオン王子は笑顔。ヴァルは明らかにめんどくさそうだ。
「うん。君達の意見も参考にしたいんだ」
「でも、知ってるでしょ? 私達、最下層の生活しか知らないよ?」
「だからこそ、いろんな人の意見を聞きたくてね」
テーブルの向かい側で、レオン王子はにこやかに答える。
国で開催するお祭りの内容を決めたい、ということだったのだが。突然そんなことを言われても、急には思いつかなかった。
「んなもん、酒だろ酒。飲み放題にすりゃいいじゃねえか」
うん、ヴァルの答えは予想してた。
「なるほど。でも、お酒を飲めない人もいるからね。ヴァルは間違いなく楽しめそうだけど」
どう考えても却下される提案を却下されて、ヴァルは面倒そうにソファにだらりと背を預けた。
レオン王子には、いろいろとお世話になっている。出来れば、力になりたい。
「そうだなあ。私なら、ご飯がいっぱい食べれたら、嬉しいかも?」
「いいね。お祭りでは、いろんな食べ物のお店を出す民もいっぱいいるし。お金が無い人の為の無償提供も増やそうかな」
良かった。お腹が空くのは、本当に辛いことだから。そんな日が一日でも減れば、喜んでくれるだろう。ケメトはまだ何も思い浮かばないようで、もうしばらく時間がかかりそうだ。
ふと、私は思いついた疑問を投げかけてみる。
「そもそも、お祭りって何でやるの?」
「異国では、神を祀る、から祭りが始まったと言われているね」
大きな物事への感謝の気持ちを忘れずにいるため、ということらしい。祭りと、
そんな状態でも、レオン王子は変わらず笑っている。話せるだけでも楽しいようだ。ヴァルのこと、理解してくれていて私も嬉しいな。
「まあとにかく、祭りは非日常の一つ。だから、日常に無いことをしたいんだ」
「じゃあ、とびっきり楽しいことをするのが、お祭りなのね?」
その通り、とレオン王子に褒められて、私は思わず笑ってしまう。ヴァルが「調子に乗るな」と睨んだが、聞こえないふりをした。
「あ、それなら、僕」
ようやく、ケメトは何か思いついたらしい。
皆の視線が、ケメトに集まる。
「家族と一緒に、楽しく過ごしたいです!」
「それ、結局いつもの日常じゃねえか」
吐き捨てたヴァルに、私もケメトもレオン王子も、思わず笑い声があがった。
これが、私たちの日常だ。