銀にふれる【執筆中】

「こうして三人で馬車に乗るのも、久しぶりね」

馬車の振動音すら、懐かしい気分になる。そう感じるほど、嵐のような日々が過ぎ去ったのだと実感した。
四人乗りの馬車に、プライド様の隣にステイル。ステイルと向かい側に俺が座っていた。
ハリソンさんも、馬車の外で護衛しているはずだ。近くにいるはずなのに、気配を感じさせないのはさすがだ。

「ところで、王家所有の避暑地ってどんなところなんです?」
「森の中にある別荘ですって。もう数十年以上使われていないそうなんだけど、ゆっくりするにはちょうどいいんじゃないかって話よ」

奪還戦の後。数日だけでも、プライドに休息を取らせたい。そうして企画されたのが、ちょっとした小旅行だった。
確かに、馬車の窓から外を見ると森の中に入ったようだ。

ふと、視界に一瞬、何か白いものが横切った。すぐに森の奥に消えたので、何かの獣だろうか。もしプライド様が散策されるなら、危険な獣がいないかだけ確認しておこう。

ステイルも忙しい身分のはずだが。おそらく強制的に休息を言い渡されたのと、プライドの近くに居たかったのだろう。
騎士団から、もっと護衛をつけるべきだ、と名乗り出たものが多かった。だがあまり人が多すぎてもプライドの気が休まらないかもしれないとのことで、俺とハリソン副隊長の二名のみになった。

「アーサー、なんだか顔色良くないけど大丈夫?」
「平気です。ちょっと眠れていないだけで」

数日たっても、プライド様の夢がなかなか頭から離れなかった。
駄目だ。しっかりしないと。プライド様に心配されるようでどうする。

「じゃあ、まず別荘についたら、アーサーをベッドに入れなきゃね」
「え」

思わずぽかんと口を開く。そしてゆっくりと、プライド様の言葉を、理解する。

「な、な、な、なっ、何で!?」
「いつも私の護衛してくれるでしょ? たまには、私がアーサーの護衛をしたっていいじゃない」
「いやいやいやいやいや、勘弁してください」

守るべき人に守られる必要はないし、そんな状況、逆に眠れねえ!
全力で首を振れば、くすくす笑うプライド様の声が返ってきた。

「冗談よ。元気出た?」
「じょ、冗談、ですか」

ほっと、胸をなでおろす。
そんな中、ステイルはずっと横を向いて笑いをこらえていた。
この野郎、後で覚えてろ。