銀にふれる【執筆中】

馬車から降りると、こじんまりとした三階建ての別荘が俺達を出迎えた。
王族の所有物件にしては小さい気がするが、お忍びのための場所だからだろうか。

「ようこそいらっしゃいました、プライド第一王女殿下」

別荘の玄関前で、小太りした中年の男性が出迎えた。服装からして貴族のようだ。灰色の薄い髪も、年齢を感じさせる。
この地方の辺境伯が、別荘も管理していると聞いた。おそらく彼だろう。

「よろしければ、是非とも王女殿下にご挨拶をお願いしたいのですが」
「失礼、プライドは馬車での移動でお疲れですので、第一王子の僕がお相手を致します」
「ありがとうございます。お会いできて光栄です」

辺境伯がにこりと笑う。嫌な笑顔だ。
貴族相手のステイルも、同じ笑顔をするのは仕方がない。ここはステイルに任せて、俺はプライド様と一緒に別荘に入っていった。

別荘内に居た侍女に部屋を案内してもらった後、まずは敷地内を見回ることにした。ハリソンさんが事前に邸内を確認しているが、念には念を入れたかった。
それだけでなく、どうにもプライド様と目を合わせられない。先ほど、馬車内でからかわれてしまったからだろうか。しっかりしなくては。

屋敷の外を歩いていると、小さな庭に出た。隅々まできちんと手入れされている。夏の季節に合わせた黄色の大輪の花が見事に咲き誇っている。
あとでプライド様にも見てもらおうか、と考えて、ふと、庭の隅に畑があることに気が付いた。すぐに育つ食用の野菜が植えられている。その近くで、庭師らしき少年が種まきをしていた。

「へえ、野菜も作ってるンすね?」

思わず呟くと、庭師の少年がのんびりとした動作で俺を見た。この地方の特徴だろうか、先ほど見た辺境伯と同じ灰色の髪と目だ。

「騎士が、何の用です?」
「ただの見回り。邪魔してたらわりぃな」
「ああ、なるほど。狩りに来たんですね」

狩り? 何のことだろうか。確かに、森があるのだから狩りも出来るだろう。

「いや、狩りは予定してねぇけど?」

少年は、どうでもよさそうな顔で仕事に戻った。あまり好感は持たれていないようだ。

「あ、そこ、もう少し深く掘った方がいいっス。たまに鳥が種を啄むことがあるんで」

それでも、思わず口出ししてしまっていた。
好かれていてもいなくても、自分が手助けできる場面があるならば、手助けすべきだ。

「そうなんだ、どうも」

淡々と、物静かに少年は返事を返した。
あまり邪魔するのも良くないと思い、踵を返した時だった。

「待って、騎士さん」

少年が近寄って、何か小さな袋を手渡してきた。

「これ、虫除けの香り袋。森に行くなら、持っていきなよ」
「へえ、ありがとな」

独特な草の匂いがする。確かに虫除けによさそうだ。
プライド様が苦手でなければ持ち歩こう。

けれども何故、森に行くと思われているのだろうか。
少年から悪い印象は受けなかった。
いろいろと考えてみたが、難しいことを考えるのは性に合わなかった。

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10話ぐらい予定。
現在執筆中。更新日未定です。