1.
「お姉様、私とデートをしましょう!」
城の廊下で、朝日に瞬く金色の光。大きな目で見上げてくる笑顔。
可愛らしい我が妹は、私が抗えないと分かっていて提案してきているとしか思えない。
「で、デート? ティアラと? 何で?」
「だって、しばらくお姉様に会えないでしょう? だから、一日でいいのでお姉様の時間をください!」
つまり、デートという名前のおでかけだ。
さて、この曇りなき眼差しを向けてくる妹は、一体何を企んでいるのだろう。
奪還戦の騒動が終わり、次の悲劇を防ぐための準備に明け暮れていた。
ティアラは王妹として学ぶべき勉強も山積みだ。確かに、今後は彼女と会える時間は少なくなる。
けれども、私が返答を躊躇してしまったのは。
これはゲームの設定ではないか、という懸念があるからだ。
これは恐らくデートイベントだ。私を『攻略』したのならば、確かにこのようなご褒美があるだろう。
本来の主人公である彼女は、攻略により、ただ一人を救う光になれる。
未だに、本当に助けたのが私でよかったのか、と悩む日々が続いている。
もしも彼女に恋人が出来たとしたら。本来は、その人の為に使ってあげるべき力のはずだ。
これは、断るべきなのだ。
「そうね、分かったわ。ティアラのスケジュールを教えてくれる?」
けれども私はそんな不安とは裏腹に、ティアラに向かって笑顔で頷いた。
ゲームの設定だから、とか。ティアラの笑顔に絆されたとか、そんな理由ではない。
私だって、ティアラと一緒に遊びたいのだ。
大事な彼女と、楽しい時間を過ごしたい。
ゲームの設定は怖いけれども。
それでも、私は立ち向かうと決めたのだ。
「じゃあ、場所はどこにする? ティアラが行きたい場所にしましょう」
「いえ、お姉様が行きたい場所はありませんか? 私はそこで構いません」
「せっかくのお出かけよ? ティアラの希望を優先させましょう?」
「駄目ですよ、お姉様こそ」
私もティアラも、一歩も譲らない。なんだかおかしくて笑ってしまう。
そして、通りかかったステイルから「お互いに相手が行きたい場所に行けば良いのでは?」と苦笑交じりの助言が入ったのだった。