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そしてやってきたデート当日は、おでかけにぴったりの青空が広がっていた。
「さて。ティアラはどこへ連れて行ってくれるのかしら?」
「ふふふ。楽しみにしていてくださいね!」
馬車の中で、二人きり。午前中のプランは、まずティアラに選んでもらうことになった。
「実はね、ティアラとどこに行こうか悩みすぎて、アーサーに心配されてしまったのよ」
「まあ、そんなに悩まれていたのですか」
「よっぽど変な顔をしていたのでしょうね。だから『デートに行くならどこがいいかしら?』と聞いてみたら、顔を真っ赤にしてしまったの」
ティアラはその様子を思い浮かべてしまったのだろう。くすくすと楽しそうに笑っている。
その他にも、昨日はわくわくしてなかなか寝付けなかったとか。仕事を大急ぎで片付けたとか。久々のゆっくりとした時間に、お喋りは尽きなかった。
そして思ったよりも早く、馬車の動きが止まった。
「私、お姉様といっしょにお散歩がしたいです!」
降り立った場所は、見慣れた城下町だった。
「お散歩? それだけでいいの?」
「はい。あと、この先にお菓子が美味しいお店があるそうなので、まずはそこに行きたいです!」
ティアラに案内されるまま、にぎわった商店街を通り抜けていく。
人の流れは多いが、変装の為にジルベール宰相に頼んで年齢を下げてもらっている。そう簡単には王族とはばれないだろう。服装も目立たない素朴なものに、顔が見えにくいよう幅広の帽子もかぶった。お揃いのデザインで、ティアラが喜んでくれたのが嬉しい。
散策しながら、ついでに街中の視察も出来た。きっとこれも狙っていたのだろう。市井の様子を間近で観察できることは、私にとってもティアラにとっても有益だ。
「出店を見ていると、アネモネからの果物が結構入ってきているわね」
「そうですね。物流も安定してきましたから」
こうして二人っきりで散策も、今までにない経験だ。
もちろん、姿を消しているが近衛騎士が周囲に居るはずだ。
本来はもっと近くでの護衛の予定だったが、「それではデートになりません!」とのティアラの一言で却下された。
「お姉様。また私といっしょにお料理をさせてくださいね」
なんだか、ゲームのスチルにでもなりそうな場面だ。
賑やかな街並み。あたたかい日差し。まぶしい笑顔。
本当に、嬉しい。
奪還戦を乗り越えて、この日常に戻ることが出来たと思うと、涙が滲みそうだ。
「ええ、もちろんよ。みんなを労うためにも、何か美味しいものを作らなきゃね」
「お姉様の料理、きっとみんなも喜びますよ!」
遠くから『俺も嬉しいです!』と声が聞こえてきた。アラン隊長の声だった気がする。『隠れてる意味が無いだろう』とカラム隊長が叱っている様子が遠目から見えて、思わず苦笑した。
「お姉様。この先何があっても、何度でも、私がお姉様を助けますからね」
それは、きっと料理のことだけではないのだろう。
その言葉通り、彼女は私に手を差し伸べ続けるのだろう。
でも、もしも彼女に愛すべき人が出来たのなら。
私と誰かを、選ぶ日が来たのならば。
ティアラが、何を選んでもいい。
私はティアラに向かって、心からの言葉を贈る。
「ありがとう。でも、ティアラがいちばん幸せになることを選んでね。私の望みは、それだけよ」
「もうっ、私は自分がいちばん幸せになること、選んでますよ! お姉様が、いちばんなんですから!」
むう、と唇を尖らせる姿がかわいい。
こんな日常を、ずっと続けていられるように。私も頑張らなければ。