ぼくはガラスのバラになりたい

6.

オニオンさんに案内されて、ぼくはとんとん拍子に王都にたどり着いた。
既に連絡が入っていたのだろう。お城の前にある広場で、あの人が、僕の姿を見るなり駆けつけてきた。

「バジルくん!? 森で行き倒れてたって聞いたよ、大丈夫!?」

平気だ、と答えたけれども、それでもまだ心配そうにあれこれ聞いてくる。
ぼくも同じく、ほっとしていた。天使さまの大事な人が、前と変わりなく元気そうだったから。

「バジルくん、フェンネルはどうしたの? 一緒じゃないの?」
「フェンネルさんなら、故郷のテシカに戻っていると思うっす」

オニオンさんが、天使さまに連絡を取ってくれた。
きっとぼくを探しているだろうから、入れ違いになると困る。待ち合わせ場所を決めた方がいいと助言してくれた。
うん、やっぱりオニオンさんって、良い人だ。そう言ったら、すごく渋い顔をされたけど。

「そっか。じゃあバジルくんも、テシカに行こうか」
「もちろんっす。でもその前に、お願いがあるっす」

ぼくは彼女の右手を両手でつかんで、祈るように頭を下げた。

ごめんなさい、天使さま。
ぼくは、わるい子になります。

「フェンネルさんに、会いに行ってほしいっす」

天使さまは、ずっと自分の想いを告げないつもりだ。
だから、ぼくがそれを伝えるのは、まちがっていることだ。ただしくないことだ。わるいことだ。
もう二度と、女神さまから助けてもらえないかもしれない。
天使さまからも、嫌われてしまうかもしれない。
でも、ぼくはもう決めたんだ。

「フェンネルさんが元気なのは、たいせつな人が傍に居るときだけっす」

目に見えない女神さまよりも。
ぼくは、目に見える天使さまを、助けたいんだ。

「フェンネルさんの傍に、ずっと居てほしいっす」

そのためなら、ぼくはどうなってもいい。

ぼくの話を真剣に聞いてくれていた彼女の瞳に、不安げな色が滲んだ。

「フェンネル、体調悪いの?」
「今はまだ元気っす。でも、もう時間が残されていないっす」

だから、助けてほしい。
言葉尻に消えていった声に、彼女は力強く頷いた。

「教えてくれてありがとう、バジルくん」

彼女は僕を抱きしめながら、安心させるように背中を撫でてくれた。

「私も、決めたよ」

そしてぼくたちは、いろんな準備をして。天使さまがいる、テシカへと向かった。